2019年7月13日(土)に行われた、「社会科学基礎論研究会 2019年度 第1回研究会」で報告された、神田雅貴(埼玉県川島町教育委員会) さんの報告要旨を公開いたします。


報告者神田雅貴(埼玉県川島町教育委員会) 
    「地域学校協働活動のコーディネーターは誰を協力者とするのか
     -ソーシャル・キャピタルを活用した社会教育行政の仕組みづくり-」
    司会:張江洋直


報告の目的
 本報告では、コーディネーター(以降、「推進員」と表記)が「地域学校協働活動」の協力者を選定するに当たりどのような基準を用いて、また、それを変転させていったのかを明らかにする。そのことにより、社会教育事業の充実した仕組みづくりにおいて有効と考えられるソーシャル・キャピタルとはどのようなものであるのかを変動していくプロセスを基に考察する。

研究対象と研究手法
 本報告では、筆者が担当する埼玉県川島町で準備を進めている地域学校協働活動(廃校になった小学校を開放し、講座等を実施することで住民の「集いの場づくり」を行う事業)の組織作りの実践記録(会議録・メモ)を中心的な資料として、推進員がどのような基準をもとに、関係者の中から運営協力者を選定していくのかを詳細に記述する。分析視角としては、ソーシャル・キャピタル論を用いる。

主たる結論
 最初の段階で推進員は、学校開放が堅実に運営できるように、同じ地域に住む親しい友人の中から協力者を選定している。これは、推進員が生活者として地域の中で構築してきたソーシャル・キャピタルを有効活用しているとみることができよう。ところが次の段階では、それらの関係者だけでは、講座の講師等の多様な活動を実現するには不十分であった。そのために、次の段階では、新たに社会教育主事(発表者)が把握している人材の中から適任者を受け容れている。このように推進員は、子供への対応等の細やかな配慮が求められる「学校開放を担当する人材」と「活動の多様性を生み出す人材」とを目的に応じて見極め、多層的なソーシャル・キャピタルの活用を実践していると見ることができよう。
ことに上記の人材に着目すれば、それらは推進員がサークル・PTA活動等を通じて親しくなった方、また社会教育主事がこれまでの業務において講師などでご協力をいただいた方である。つまり、それらは、これまでの多層的な諸活動のプロセスで「蓄積」されてきたソーシャル・キャピタルが再「活用」されているとみることができよう。諸活動を通じてソーシャル・キャピタルには増減が生じるにせよ、このような再活性化を通じてそれが徐々に蓄積されていくと考えれば、行政施策が「ソーシャル・キャピタルを循環させる」という視点が重要になるだろう。
同様に着目すべき点は、本活動を通じたソーシャル・キャピタルの類型の転換関係である。社会教育主事が紹介した人材が典型的な例だが、さほど関係性が密ではない場合でも、本活動を通じて関係性が深まることにより、橋渡し型から結束型ソーシャル・キャピタルへと変化する可能性があり、変動していくプロセスを捉えるという視点がさらに重要になるだろう。

今後の課題
 今後は、推進員を社会教育主事がどのように選定しているのかを明らかにしていきたい。なぜならば、社会教育事業全体の枠組みを構築する上で、ソーシャル・キャピタルを有効活用できる推進員の見極めは極めて重要になるからであり、そのプロセスを明確にすることが社会教育事業のさらなる充実にとって1つの鍵と成り得ると考えるからである。

参考文献
1)ロバート・D・パットナム『孤独なボウリング』柴内康文訳,柏書房,2006,p14
2)神田雅貴「社会教育行政の施策が地域の教育力向上に与える影響 -ソーシャル・キャピタルを教育資源として活用するプロセス-」大正大学大学院学位論文,2017